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文系弁理士の就職は? 商標・法学系職種について解説-ariadnet

文系弁理士の就職は? 商標・法学系職種について解説 |2022年11月06日

弁理士は、特許が主要業務であり、明細書を書くためには背景技術とともに発明を理解し、技術的特徴や作用、効果を説明しなければなりません。

そこで弁理士の多くは技術畑の出身となりますが、理系の出身ではない文系弁理士も一定数います。
毎年の弁理士試験の合格者でも、2割前後の文系出身者がいます。

弁理士も、特許法、商標法などに関わる法律資格のため、文系弁理士の多くは法学部出身ですが、必ずしも法学を学んだ人ばかりではありません。
社会人になって時間がたってから、方向転換して弁理士を目指す人も多いためです。
ちなみに筆者は文学部出身です。

社会人としての経験を積むと、それまでの経歴を生かせる職種もあり、それが評価されて文系弁理士の能力を活かせる就職先もあるでしょう。
ただし、特許業務がメインであることに変わりなく、文系出身者、法学出身者の就職先としては、次のような職場があげられます。

大手事務所の商標部門

商標の専門部署、あるいは商標専任弁理士は、ある程度の規模の事務所でないと設置されていません。
弁理士が1名あるいは3名くらいの事務所であれば、特許も商標も担当するといったことが普通です。

大手事務所では、商標担当弁理士、あるいは意匠・商標担当で、文系・法学系出身の弁理士向けの職種があります。
また商標担当の補助者を雇用する中規模~大規模事務所もあります。

こうした求人は、東京のほか、近郊の首都圏中核都市、大阪、名古屋などの大都市圏に集中しています。

求人数としては決して多いとはいえません。
商標の案件を多数手がけ、商標実務を習得するには良い環境といえるでしょう。
どうしても商標専任の部門で経験・実績を積みたければ、粘り強く求人に応募して
チャレンジを続けるのもよいでしょう。

大手事務所の国際部門

特許事務所の国際部門は、海外各国の代理人を介して仕事を進めるため、英語など外国語の能力を活かせる職種です。

海外クライアントが日本国に出願をする外内がいないの仕事、逆に日本の出願人が海外各国に出願する内外ないがいの仕事があります。
特に海外出願を担当する場合には、各国の商標制度、特許制度など知的財産法を熟知する必要があります。
海外から日本への出願は、代理人と外国語で通信し、海外送金で料金を受領するほかは、前述の商標部門の仕事と同じです。

国際部門の職種に就くには、必ずしも商標の法域には限りません。
特許、意匠などの出願案件でも、海外代理人とやりとりするため、各国法の理解や、期限管理のほか、法律用語や技術用語を翻訳し伝える能力が必要となります。

外内では、日本の法制度を的確に翻訳し、海外代理人に伝えなければなりません。

大手事務所の事務部門

特許事務所には、事務処理の仕事も多く、期限管理などの特許法、商標法ほかの専門知識も必要です。
このため、弁理士が事務部門を統括する必要といったこともあり、責任の大きい仕事です。
文系出身者の弁理士が就職を考える場合の候補ともなるでしょう。

中堅規模以下の事務所では、事務担当と商標担当を兼任するといった場合もあるかもしれません。筆者はかつてそのような立場を経験しました。

事務部門を経験することの利点は、パソコンでの期限管理、インターネット出願ソフト、その他必要に応じて画像処理などのパソコン知識、データ処理知識が身につくことです。
さらに請求処理などの経理事務なども経験できれば、将来独立を考えた際にも役立ちます。

企業の知財部

企業の知財部も、弁理士の就職先の候補です。
企業の知財部は、特許、商標などの出願業務のほか、自社の発明や創作の発掘、ライセンス交渉や契約などのさまざまな仕事が発生します。

知財以外の法務も取り扱う法務部も、文系・法学系出身者にとっては就職の候補となるでしょう。

弁護士事務所

弁護士事務所には、商標などの知財業務を行っているところがあります。
一方で、知財訴訟などは行っても、特許庁への出願業務は外部の弁理士に依頼する事務所もあるでしょう。

知財業務を行う弁護士事務所では、特許事務所と同様に、事務所により商標担当や、国際業務などが発生する場合があります。
知財、商標担当業務を含む職種で募集がある場合のほか、通常の弁護士補助者としての求人もあります。

商標特化型の事務所は?

近年、商標に特化した事務所がいくつかあり、主としてウェブサイトでの受注を通じて、商標登録出願の業務を行っています。
こうした事務所の求人があれば、大手事務所の商標担当と同様の職種に就くことができるでしょう。
ただしこの種の事務所では、薄利多売の傾向が強く、就職を考えるにあたっても注意が必要です。

ウェブサイトからの受注に頼っている事務所では、検索エンジンのアルゴリズムの変化や、価格競争などにより、今はよくても業績変動が顕著な事務所が多く見受けられます。
数年経つとインターネット検索結果の事務所の顔ぶれが変わってしまうことも多く、長期的にはどうなるかわかりません。
このことを理解したうえで、考えるべきといえます。

文系弁理士のスキルアップ

文系・法学系出身者であっても、弁理士資格を取得して終わりではなく、実務の習得はもちろん、さらにスキルアップをすることが必要です。
もっともスキルアップは文系・法学系出身者に限ることではなく、理系出身者でももちろん必要です。

事務処理(期限管理、経理、データ管理)

期限管理、各種のパソコンソフトなどのデータ処理、バックアップやネットセキュリティなどの知識と実務の習得は、弁理士業務には欠かせないものです。
期限管理は、失敗すれば大きなリスクもある、弁理士の重要な業務です。

請求処理や税務などの知識も、将来の独立を考えるならば必須です。
源泉徴収や、特許印紙代などの非課税科目の請求にも対応した経理ソフトを導入する必要があります。

図面作成、画像処理、調査

図面の作成などは外注することもあるかもしれません。
しかし簡単な図面や画像処理、意匠登録出願などでも使うことがある写真撮影などのスキルがあると、事務所勤務でも重宝され、独立を考えたらやはり必要です。

特許調査、商標調査などもスキルが必要な業務です。

プログラミング、情報処理

プログラミングは弁理士業務には必要ではありません。
しかし、文系・法学系出身者でも、理系の知識も勉強し、特許出願業務を行うケースもあります。
弁理士資格取得後に、理系大学に進学する人も意外にいます。

文系・法学系出身者でも、ソフトウェア、情報処理技術などは、論理的思考ができ、デジタル知識に興味があるならば、専門知識を習得することはおすすめです。
AIなども含めて、デジタル知識が必須になってきています。

ウェブサイト構築

ウェブサイトの構築、運営知識は、ぜひとも習得したいところです。
独立開業を目指すなら必須です。

英語、外国語、翻訳

英語などの外国語の勉強や、特許・法律文書の翻訳も、文系・法学系出身者にとっては習得しておいて損はありません。
業務の範囲が広がるほか、独立後に業務として弁理士業務と並行して行うことも可能になります。

契約、法務、行政書士業務

ライセンス契約などの実務知識のほか、民法、民事訴訟法などの法務知識があると、業務の範囲が広がるほか、弁理士登録後に、特定侵害訴訟代理業務試験にも役立ちます。
独立後に弁理士業務と並行して、行政書士登録を行い、法務分野の業務を行うことも視野に入るでしょう。


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■このページの著者:金原 正道

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