司法書士とは-2022年06月16日
司法書士は、会社や社団法人など法人の登記である商業登記、土地や建物などの不動産登記のほか、供託手続のなど法務局に対する手続の代理、法務局に提出する書類の作成、その他の業務を行う法律隣接職種です。
法務局長に対する登記や供託の審査請求手続の代理も行います。
司法書士のもう一つの業務の柱としては、裁判所または検察庁に提出する書類の作成があります。
通常、裁判や調停などの裁判所に対する司法手続きは、弁護士が行うものですが弁護士ではなく本人訴訟を行う場合などに、これらの書類の作成を行うことができます。
その他、法務局に対する筆界特定手続書類の作成なども行います。
法務大臣の認定を受けた司法書士については、簡易裁判所における訴額140万円以下の訴訟、民事調停、仲裁事件、裁判外和解等の代理、これらに関する相談を行うことができます。
これらは、弁護士法第72条の弁護士独占業務の例外として、一定の資格要件を満たした司法書士に認められる業務です。
司法書士の使命と職責
司法書士は、司法書士法の定めるところにより、その業務とする登記、供託、訴訟、その他の法律事務の専門家として、国民の権利を擁護し、もって自由かつ公正な社会の形成に寄与することを使命としています(司法書士法第1条)。
このため司法書士は、常に品位を保持し、業務に関する法令及び実務に精通して、公正かつ誠実にその業務を行わなければなりません(司法書士法第2条)。
司法書士の業務
司法書士は、司法書士法第3条に定める下記の事務を、他人の依頼を受けて行うことを業務としています。
登記・供託関連業務
・登記または供託に関する手続についての代理
・法務局または地方法務局に提出し、または提供する書類・電磁的記録の作成
・法務局または地方法務局の長に対する登記・供託に関する審査請求の手続についての代理
・これらについての相談
裁判書類等の作成関連業務
・裁判所、検察庁に提出する書類の作成、筆界特定の手続において法務局・地方法務局に提出または提供する書類・電磁的記録の作成
・これらについての相談
簡裁訴訟代理等関係業務
司法書士会の会員のうち、簡裁訴訟代理等関係業務について法務省令で定める法人が実施する所定の研修課程を修了し、法務大臣が必要な能力を有すると認定した司法書士に限り、下記の簡易裁判所における次に掲げる手続についての代理業務を行うことができます。
・民事訴訟法の規定による手続であって、訴訟の目的の価額が140万円を超えないもの
・民事訴訟法の規定による和解の手続、支払督促の手続であって、請求の目的の価額が140万円を超えないもの
・民事訴訟法の規定による訴えの提起前における証拠保全手続、民事保全法の規定による手続であって、本案の訴訟の目的の価額が140万円を超えないもの
・民事調停法の規定による手続であって、調停を求める事項の価額が140万円を超えないもの
・民事執行法の規定による少額訴訟債権執行の手続であって、請求の価額が140万円を超えないもの
・民事に関する紛争(簡易裁判所における訴訟手続の対象となるもの)であって、紛争の目的の価額が140万円を超えないものについての相談、仲裁事件の手続・裁判外の和解について代理
・筆界特定の手続であって、対象土地の価額として法務省令で定める方法により算定される額の合計額の二分の一に相当する額に、筆界特定によって通常得られることとなる利益の割合として法務省令で定める割合を乗じて得た額が、140万円を超えないものについての相談、代理
司法書士でない者による業務の禁止
司法書士会に入会している司法書士、司法書士法人でない者(公共嘱託登記司法書士協会を除く)は、司法書士法に規定する上記の登記・供託関連業務、裁判書類等の作成関連業務を行うことが禁じられており、違反に対しては刑事罰があります。
(ただし他の法律に別段の定めがある場合は、この限りではありません)
公共嘱託登記司法書士協会は、その業務の範囲を超えて、司法書士法に規定する上記の登記・供託関連業務、裁判書類等の作成関連業務を行うことはできません。
名称独占
司法書士でない者は、「司法書士」またはこれに紛らわしい名称を用いてはなりません。
司法書士法人でない者は、「司法書士法人」またはこれに紛らわしい名称を用いてはならない。
公共嘱託登記司法書士協会でない者は、「公共嘱託登記司法書士協会」またはこれに紛らわしい名称を用いてはなりません。
司法書士は司法書士会に所属します
司法書士となる資格を有する者が、司法書士となるには、日本司法書士会連合会に備える司法書士名簿に、氏名、生年月日、事務所の所在地、所属する司法書士会等の所定の事項の登録を受けなければなりません。
司法書士名簿の登録は、日本司法書士会連合会が行います。
司法書士会および日本司法書士会連合会
司法書士は、事務所の所在地を管轄する法務局または地方法務局の管轄区域ごとに、会則を定めて、一つの司法書士会を設立しなければなりません。
司法書士会は、会員の品位を保持し、その業務の改善進歩を図るため、会員の指導及び連絡に関する事務を行うことを目的とする法人です。
司法書士会の会則には、会議に関する規定、会員の品位保持に関する規定、会員の執務に関する規定、司法書士の研修に関する規定などが定められます。
司法書士会は、主として会員が納める会費により運営されています。
全国の司法書士会は、司法書士会の会員の品位を保持し、その業務の改善進歩を図るため、司法書士会およびその会員の指導及び連絡に関する事務を行い、司法書士の登録に関する事務を行うことを目的として、日本司法書士会連合会を設立しています。
司法書士の登録に関する規定ほかの会則を定め、運営されています。
司法書士になるには
次の各号のいずれかに該当する者は、司法書士となる資格を有します。
1 司法書士試験に合格した者
2 裁判所事務官、裁判所書記官、法務事務官、検察事務官として、その職務に従事した期間が通算して10年以上になる者、またはこれと同等以上の法律に関する知識・実務の経験を有する者であって、法務大臣が業務を行うのに必要な知識と能力を有すると認めた者
司法書士の義務
司法書士は、法務省令で定める基準に従い、事務所を設ける必要があります(司法書士法第20条)。
司法書士は、正当な事由がある場合でなければ、依頼(簡裁訴訟代理等関係業務に関するものを除く)を拒むことができません(司法書士法第21条)。
司法書士は、公務員として職務上取り扱った事件、仲裁手続により仲裁人として取り扱った事件については、その業務を行うことはできません。
また、司法書士は、相手方の依頼を受けて裁判書類等の作成業務を行った事件、簡裁訴訟代理等関係業務に関するものとして、相手方の協議を受けて賛助またはその依頼を承諾した事件や、相手方の協議を受けた事件で協議の程度・方法が信頼関係に基づくと認められるもの、簡裁訴訟代理等関係業務に関するものとして受任している事件の相手方からの依頼による他の事件など、一定の事件については、第業務を行うことはできません。
司法書士は、所属する司法書士会および日本司法書士会連合会の会則を守らなければなりません。
司法書士、司法書士であった者は、正当な事由がある場合でなければ、業務上取り扱った事件について知ることのできた秘密を他に漏らしてはなりません。
司法書士は、所属する司法書士会および日本司法書士会連合会が実施する研修を受け、その資質の向上を図るように努めなければなりません。
司法書士試験
司法書士試験は、毎年1回実施されています。
司法書士試験は、次に掲げる事項について、筆記試験と、口述試験とによって行われます。
口述試験は、筆記試験に合格した者について行われます。
1 憲法、民法、商法、刑法に関する知識
2 登記、供託及び訴訟に関する知識
3 その他、登記・供託関連業務、裁判書類等の作成関連業務(司法書士法第3条第1項第1号から第5号)を行うのに必要な知識及び能力
筆記試験に合格した者に対しては、その申請により、次回の司法書士試験の筆記試験は免除され、口述試験のみの受験とすることが可能です。
司法書士試験の内容と日程-2022年06月16日
司法書士試験は、司法書士になる資格を授与するために、国家試験として法務省が実施するものです。
憲法、民法、商法(会社法その他の商法分野に関する法令を含む)、刑法に関する知識、 不動産登記、商業(法人)登記に関する知識(登記申請書の作成に関するものを含む)、 供託並びに民事訴訟、民事執行及び民事保全に関する知識、その他司法書士法の業務を行うのに必要な知識及び能力が出題されます。
法律隣接職種の資格試験の中でも、特に実務能力に近い出題がされる試験です。
司法書士試験の内容
受験資格等
試験は、司法書士法第6条の規定に基づいて行われるものであり、受験資格の制限はなく、誰でも受験することができます。
司法書士試験の日程
受験申請受付期間 : 5月上旬
筆記試験期日 : 7月上旬
筆記試験の合格者発表 : 10月上旬
口述試験(筆記試験合格者のみ) : 10月上旬
最終合格者発表 : 10月下旬~11月上旬
合格率 ここ数年、3%台で推移しています。
筆記試験期日 : 7月上旬
午前の部2時間
午後の部3時間
口述試験(筆記試験合格者のみ) : 10月上旬
筆記試験の内容
(1)憲法、民法、商法(会社法その他の商法分野に関する法令を含む。)及び刑法に関する知識
(2)不動産登記及び商業(法人)登記に関する知識(登記申請書の作成に関するものを含む。)
(3)供託並びに民事訴訟、民事執行及び民事保全に関する知識
(4)その他司法書士法第3条第1項第1号から第5号までに規定する業務を行うのに必要な知識及び能力
試験の方法、配点及び合格判定の方法
午前の部の試験(1)および午後の部の試験のうち(3)、(4)については、多肢択一式により行われます。
午後の部の試験のうち(2)については多肢択一式および記述式により行われます。
午前の部の試験、午後の部の試験の多肢択一式問題は、それぞれ35問で105点満点です。
午後の部の試験の記述式問題は、2問で70点満点です。
午前の部の試験の多肢択一式問題、午後の部の試験の多肢択一式問題、または午後の部の試験の記述式問題の、各成績のいずれかがそれぞれ一定の基準点に達しない場合には、それだけで不合格となります。
口述試験の内容
下記の事項について行います。
(2)不動産登記及び商業(法人)登記に関する知識(登記申請書の作成に関するものを含む)
(4)その他司法書士法第3条第1項第1号から第5号までに規定する業務を行うのに必要な知識及び能力
試験を実施する法務局又は地方法務局
筆記試験
東京、横浜、さいたま、千葉、静岡、大阪、京都、神戸、名古屋、広島、福岡、那覇、
仙台、札幌、高松
口述試験
東京(注1)、大阪(注2)、名古屋、広島、福岡(注3)、仙台、札幌、高松
(注1)筆記試験を横浜、さいたま、千葉、静岡で受験した場合の口述試験は東京で実施されます。
(注2)筆記試験を京都、神戸で受験した場合の口述試験は大阪で実施されます。
(注3)筆記試験を那覇で受験した場合の口述試験は福岡で実施されます。
司法書士試験の難易度、勉強時間と、過去問題-2022年06月15日
司法書士試験は、難関資格で、勉強時間が3000時間程度は必要だといわれています。
合格率は近年、4~5%程度で推移しています。
合格者の受験回数など、公式の統計は出ていませんが、LEC東京リーガルマインドの調査では、1回目で合格する人も1割弱はいるものの、3回程度受験する人が普通で、5回以上の受験者もかなりの数にのぼっています。
3年以内での合格を目指す、あるいは2回目で合格できるならば、短期合格といえるのではないでしょうか。
司法書士試験の出願傾向の特徴
司法書士試験は、その出願傾向の特徴をあげれば、下記の2点に集約されると思います。
出題範囲の広さ
午前の部は、2時間の試験時間で、下記の法令が択一式により出題されます。
憲法/民法/商法/刑法 合計35問(105点満点)
午後の部は、3時間の試験時間で、下記の法令が択一式で出題され、さらに記述式の問題があります。
択一式
不動産登記法/商業登記法/民事訴訟法・民事執行法・民事保全法/供託法/司法書士法/
合計35問(105点満点)
記述式
不動産登記法書式
商業登記法書式
各1問(70点満点)
実務的出題の多さ
択一式試験でも、特に午後の部では、実務に近い手続的な問題や、登記に必要な要件などを問う出題が多くあります。
さらに、不動産登記法、商業登記法の書式に関する記述式問題は、実務に即した試験内容となっており、細かい法令の知識が問われます。
記述式問題の得点分布のばらつきを見ても、かなりの関門といえるのではないでしょうか。
令和3年度司法書士試験筆記試験(記述式問題)得点別員数表[PDF] 法務省
司法書士試験問題に見るテキスト選びの基本
午前の部の択一式試験科目のうち、憲法、刑法は問題数も少なく、しかも他の試験科目との関連性が低いものです。
かつては法律の資格試験といえば、各科目の法律の基本書を使うのが一般的でしたが、それでは少々時間がもったいなさすぎます。
不動産登記法、商業登記法に関しては、それぞれ民法と、商法、会社法とを勉強してからでないと、勉強に進めません。
これ以外に、民事訴訟法、供託法などがあります。
午前の部でも、民法に関してはまんべんなく広い範囲からの出題がされます。
したがって、民法、憲法、刑法を勉強を始める初期のころに、まずは司法書士試験用のテキストで勉強し、勉強がある程度進んだ段階になってから、不動産登記法、商業登記法、民事訴訟法などに進めるというのが、早期合格のためには効率がよさそうです。
法学部出身の人であればすでに持っているかもしれませんが、基本書的なものは、使わなくてもよいかと思います。
民法、商法、会社法などは基本書があってもよいですが、司法書士試験用にまとめられたテキストだけでは不明な点などを参照するための程度にしておいた方が、効率がよいでしょう。
なお、どの法律系資格試験でもそうですが、判例つき六法は、自分が使いやすいと思ったものを手元に持っているのがよいと思います。
令和3年度司法書士試験問題・午前の部
午前の部・憲法
午前の部・民法
午前の部・刑法
午前の部・会社法
令和3年度司法書士試験問題 法務省
試験問題(午前の部)[PDF] 法務省
令和3年度司法書士試験問題・午後の部
午後の部・民事訴訟法
午後の部・不動産登記法
午後の部・商業登記法
不動産登記法(書式)・記述式
商業登記法(書式)・記述式
令和3年度司法書士試験問題 法務省
試験問題(午後の部)[PDF] 法務省
令和3年度司法書士試験筆記試験(記述式問題)の出題の趣旨
司法書士試験筆記試験の記述式問題の出題の趣旨については、法務省が公表しています。
【第36問】(不動産登記法)については、問1から問4までありますが、問1についての趣旨は、下記の通りです。
「問題文に記載された事実関係及び別紙として示された資料から、会社分割を登記原因とする所有権の移転の登記並びにその前提として必要となる所有権の登記名義人の住所及び名称の変更の登記を申請すべきことを読み取った上で、申請情報及び添付情報の内容並びに登録免許税の計算方法についての理解を問い、その正確な記載を求めるもの」
【第37問】(商業登記法)については、問1から問3までありますが、問1についての趣旨は下記の通りです。
「株主名簿管理人の設置、新株予約権の発行及び会計監査人の変更につき、提示された資料から読み取り、株主名簿管理人を設置するための要件,種類株式発行株式会社における新株予約権の発行に関する手続、定時株主総会において別段の決議がされなかったときの会計監査人の再任等に留意しながら、登記の申請書を正確に記載した上、当該申請書の添付書面を特定し、納付すべき登録免許税の額を正確に計算することを求めるもの」
令和3年度司法書士試験筆記試験(記述式問題)の出題の趣旨[PDF] 法務省
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■このページの著者:金原 正道